ホームセンターとプログラミング
たぶん、はるか昔は「日曜大工」なんて言葉はなかったでしょう。本格的な大工仕事以外のちょっとした修繕は、ごく当たり前に(つまり日曜日だけでなく日常的に)行われていたかと思います。
でもって、戦後の大量消費の時代が訪れます。
「消費は美徳」の時代においては、修繕は日常的な行為ではなく、きわめて非日常的な、もっと言えば「非倫理的な」行為となります。なにせ消費することが美徳なのですから。
もちろん、そうした時代にあっても修繕を自分の手で行う人はいます。むしろ、あらゆるトレンドには、反トレンドが発生するように「消費は美徳だからこそ、自分の手で修繕する」という動きが生まれてくるのかもしれません。
なんにせよ、DIYです。
Do it yourselfの精神と、それを支えるホームセンターが「日曜大工」を確立しました。すべてを自分の手でやるわけではないが、ちょっとした修繕ならば自分の手で行う。あるいは、自分の手で何かを作る。そういうマイクロ・カルチャーが確立されたわけです。
で、プログラミング。
個人的には「みんなももっと、プログラミングして、自分のツールを作るようになったらいいな」と感じています。今の段階であれば、それは夢物語に思えるかもしれません。しかし、昨今は「プログラミング教育」が義務教育に折り込まれるようになっていますし、それにともなって教育産業もプログラミングに注目しています。少なくとも、入り口や興味の裾野は広がっていると言って間違いないでしょう。
そのようにして、プログラミングのマインドセットが育ってくれば、あとはもう一歩です。「ホームセンター」のような存在が生まれれば、現在よりもはるかに活発に「個人のツール作り」が行われるようになるでしょう。
むろん、たいていのDIYが自宅を自分の手で建てたりはしないように、自作のプログラミングもOSを自作したりはしません。でも、部屋の棚を自分で作るのと同じレベルにおいて「自作ツール」を作る未来はやってくるのではないでしょうか。
はるか昔は、何もかもを自分の手で書かなければいけない時代があり、それについで「アプリ」の時代がやってきて、その後にやってくるマイクロ・カルチャーとしての「日曜プログラミング」の時代。私はその到来を待ち望んでいます。
同じマインドセットで話ができる同士が増えるのは、楽しいことだからです。