〈「使いこなす」を使わない〉
以前から書こうと思っていた題材に関する記事が上がっていたので、勢いで私も書いておきます。
◇Noratetsu Lab: ツールを「使いこなす」という余計な構え
このトンネルChannelでは、もちろん自由に書いてもらっていいのですが、一つの指針として〈「使いこなす」を使わない〉を掲げてもいいかなと考えています。〈「使いこなす」を目指さない〉でもいいのですが、語の反復が効いている前者をとりあえず採用しておきます。
で、〈「使いこなす」を使わない〉とは、文章の中で「○○というツールを使いこなしたい」とか「使いこなせないで困っている」という表現を用いない、ということです。もう少し精緻に言い直せば、そういう表現をして何かを言った気持ちにならないようにする、となるでしょう。
つまり、そういう感覚が生まれたら、そこからさらに一歩進んで、「○○というツールを使いこなしたい」とは、具体的にどういう状態を欲しているのかを考えるのです。あるいは、「使いこなせないで困っている」とは具体的に何で困っているのかを考えるのです。
個人的に思うのは、「使いこなす」と「何者かになりたい」は非常によく似た欲望で、全体的に漠然とした印象があります。イメージだけが先行して、中身が空っぽなのです。にもかかわらず、その言葉を使っている当事者は、その空っぽ性に気がついていません。もし、気がついているならば、中身を探し求めるという探求がはじまるのですが、気がついていないので、空っぽのボックスがそこに置かれたままになるのです。
もちろん、それで問いが解かれることはありません。
というわけで、〈「使いこなす」を使わない〉は表現の抑制ではなく、むしろ思考の促進のための指針です。
自分は何を欲しているのかを、冷静に考えてみること。
現状にどんな問題が課題があり、それをどう解決したいのかを見つめてみること。
おそらくそうした視点がない限り、ツールと自分の良好な関係は築けない気がします。