目標について改めて
たくさんの方に「目標」について書いていただきました。ありがとうございます。
引き続き投稿はお待ちしておりますが、少し考えたことを小節線代わりに書いておきます。
目標のタイプ
ざっと観察してみると「目標」と呼ばれるものには、いくつかのパターンがあることがわかりました。まず、このことが面白いですね。「目標」と口にすると、あたかもそれは皆が共通して理解している言葉のように感じられるのに、その内実は異なりがあるのです。
これは、「目標」という言葉を辞書で引いたときに複数の意味が出てくるのとはまた違った事態でしょう。そうではなく、置かれている文脈によって、その言葉の立ち振る舞いが変わってくるようなイメージです。
プログラミングで言えば、「目標」という変数にいろいろな値がつっこめるのではなく、名前空間「セルフマネジメント」における「目標」というオブジェクト(あるいはメソッド)の実装が人それぞれに異なっているのです。
function セルフマネジメント(){
this.目標 = function(){
}
}
よって、もしこの話題をきちんと限定して語るならば「セルフマネジメントにおける目標の〜〜」という言い方をするとよりフォーカスが高まるでしょう。私たちが、自分と付き合うときに設定する「目標」というものについて語るんだぞ、と示しておくわけです。逆に言えば、そうでなは領域(≒名前空間)における「目標」もあり、それはそれで別の議論が可能になると思います。
で、先ほど"「目標」というオブジェクトの実装が人それぞれに異なっている"と書きましたが、実際には異なっている点よりも共通する点が目に付きます。それは「目標って何だか苦手」という感覚です。
投稿してくださった方は皆、「私、目標ってすごく好きなんですよ。年がら年中目標を立てています」というのではなく、むしろその逆のような雰囲気が感じられました。前者を自己啓発適合者と呼ぶならば、そうではない人たち、ということです。
で、そうした人たちの投稿が多いのは、このコミュニティーがそういう人たちが集まっているからなのか、全人口的な傾向なのかはちょっとわからないので、引き続き調査が必要ですが、ともあれ、私自身はそれほど「目標」に苦手意識を感じていません。というかむしろそれを設定するのが好きなくらいです。
その好みの違いがどこから来るのだろうかと結構考えていたのですが、その「ノルマ」感に結構違いがあるのだな〜と皆さんの投稿を読んでいて感じました。私にとって目標は「達成すべき」ものではありませんし、それが未達でもなんら心理的ダメージを受けません。だからこそ、私には目標に苦手意識がないのでしょう。
私にとって目標とは、ある高度における基準点を定めるようなもので、それが決まっていることで「AなのBなの?」といった選択肢に直面したときに「選びやすく」なるものでしかありません。つまり、「指針」ということです。それを決めないよりは、決めておいたほうが選択しやすくなるもの。そういうものとして「目標」を捉えています。
目標を達成することは自己実現とは何一つ関係がありませんし、目標は自分を採点する基準でもありません。たとえば、新しい本を書くときには「何か新しいチャレンジをする」という目標を持ちます。それぞれの本でどんな「新しいこと」にチャレンジするのかはわかりませんが、まったく同じことの繰り返しにはしないと決めています。これも目標です。
で、そういう目標を持っておくことで、自分を方向づけることができます。手を抜き、だらだらやってしまうと行為の対象に意義を感じなくなってしまう畏れがあるのですが、それを回避できるのです。
そもそも息を吸うように簡単にできることは「目標」にはなりえないわけで、もし目標にしたことが達成できなくてもそれは自然なことでしかありません。失敗して上等、なくらいが私にとっての目標なのです。
でも、組織や共同体において「設定せよ」と示唆される目標は、そうしたものとは違っているのでしょう。それは達成しなければならないものであり、つまりはノルマのパラフレーズとして設定されるのです。でもってそれは、組織や共同体においてこういうことをやって欲しいという要請を、「個人が主体的に決めた目標」にすり替えることで、そこにある抑圧を見えなくなるする効果があるのだと想像します。つまり、本来的に主体性とまったく逆のものが「目標」と呼ばれてしまっているのです。
自分が、自分のために目標を決めるのですから、自分に合わなくなったら修正したり破棄したりしてもぜんぜん大丈夫でしょう。なにせそれは「目標」(めじるし)でしかなく、つまりは「どうせ進むなら、あっちの方に向かって進もうぜ」というシンボルでしかありません。でもって、少しでもそういう進行が生まれているのだとしたら、目標(めじるし)は立派にその役割をまっとうしたことになります。
なんであれ、目標もまたスナップショットに過ぎません。どこかの時点で、この事柄をこの期間の目標にしようと思った足跡が刻まれているだけです。それをどう利用するのかは、今の自分に任されています。だから、別に目標を立てても立てなくてもぜんぜんOKです。「今」の自分に役立ちそうなら使う、そうでないなら使わない。それくらいのラフな付きあい方できっと大丈夫でしょう。